休日前夜
隣人は決まって日曜の夜に女性を連れ込む。
きっと月曜が休日なのだろう。
“ふたりの夜が幸せなものでありますように”
今の私には日常ほぼ無関係な隣人に対し、そう願う余裕すらある。
【夜は素晴らしい時であるべき】
その時私が夢中になっていた男は、比較的ライトなジャンキーで家のベッドは登るのがやっとなほど厚みのあるマットレスでキングサイズだった。
ベッドルームの窓は二重になったシャッターがいつも閉まっており、光など一切入らないため今が何時なのかわからなかった。
私は本当にその場所が好きで、そこで過ごした時間は今まで経験したなによりも甘美で贅沢に思えた。
若さのせいだ。
夜が素晴らしかったのか
暗がりで繰り広げられるチープな愛みたいものが素晴らしいのか
その差がわからなかった。
若さのせいだ。
全て若さのせいにして何事もなかったかのようにできるのも終わりが近い。
現実が責任を背負って3駅手前の駅まで到着してる。
いや、実はもう到着していて乗車していないだけかもしれない。